「無農薬野菜」は総て安全・安心なのかという疑問。

ちょっと長くなりますが、今回は野菜の栽培についてお話させてください。
ここ数年で高まった「食の安全」への意識。
その中で注目されているのが「無農薬・無化学肥料栽培」です。
かつては、「有機栽培」とも呼ばれていましたが、現在では第3者によるJAS認証を受けたもののみ
「有機栽培」の表記が可能です。
この認証を受けずに、農薬を使わない栽培が「無農薬栽培」。
化学肥料を使わない栽培が「無化学肥料栽培」と一般に呼ばれています。
多くの方が安心・安全の証と思われている無農薬栽培ですが、
現状の無農薬表記は安全性を保証するものではありません。
「農薬を使っていない」ことをうたっているだけです。
「農薬は危険」多くの方にとって、常識的な認識かもしれませんが、実際には「農薬」とされる資材は、
安全性の厳しい検査を通ったものであり、その使用法も厳しく規定されています。
自然由来、合成物、有機質、無機質に関わらず、その効果と安全性の検査を通ったものは「農薬」と呼ばれます。
無農薬栽培で病気予防や虫除けに使われる資材のほとんどは、安全性、効果を公的機関が検査していません。
検査していないから農薬ではないのです。
ここで疑問に思われるのは次の2点でしょう。
○ではなぜ農薬が危険だといわれているのか?
○危険なものをなぜ使うのか?
▼農薬が危険といわれる理由
先ほど述べたように、安全性についての検証が行われたはずの農薬が危ないといわれる理由。
ひとつは安全性の知見が今より低かったこと。
もうひとつに、時として規定量より過剰に使われていたことにあると推測しています。
今ほど食物の安全性が問題にならなかった頃、作物に求められたものは「見た目」です。
虫食い、汚れの無しは当然として、そのサイズや重さも厳密な規定から外れてしまえば買ってもらえない。
そうなれば、生産者が最優先するのは食味や栄養価ではなくなります。
決められたサイズの、綺麗な作物を作るために、生産者のコントロールが効きやすい生産。
つまり、農薬を可能な限り大量に使い、肥料も即効性を過剰に使うことで、成育を早める。
生産者と、買い取る業者が、見た目訴求に走れば、食べ物として大事な味や栄養価は損なわれ、
農薬に耐性がついた病気や害虫を駆除するために、更に強い薬を使う悪循環が起こります。
いくら安全性の検証が済んでいるとはいえ、規定より過剰になれば悪影響は出ます。
特に使う側の農家は高い危険性にさらされます。
おいしくないことがわかっていても、綺麗さを優先して作らなければ売れない。
また、消費者も綺麗なものしか買わない。そんな状況は、今から10年前には当たり前のことでした。
その反動が、無農薬・無化学肥料への関心を高めました。
生産者、消費者ともに化学薬品・化学肥料の過剰利用の弊害に気づき、どちらも使わないという取り組みが始まりました。
ヨーロッパで始まった、有機栽培の試みは、化学肥料過多による土壌の劣化、
酸性雨などの環境破壊が深刻になったことが大きな理由です。
このことから、科学的に合成された農薬・肥料は悪であり、自然由来な資材、肥料が善というイメージが広がります。
しかし、植物は由来に関わらず無機物を栄養として育つこと、農薬が安全性の試験を通過していることは事実です。
問題の原因が、過剰施用であるからといって、全面的な禁止は逆に弊害も出ます。
例えば、肥満の人にとって、一刻の断食も有効な健康法ですが、栄養不足な人の断食は危険です。
薬の飲みすぎが健康を害するからといって、傷薬や風邪薬、薬と名のつく全てを使用禁止にするのは不合理です。
化学肥料・農薬でコントロールしなければ作物は作れない。
化学肥料・農薬を僅かでも使えば危険な作物になる。
どちらも偏った、極端な考え方であり、栽培方法がこの2択だけと考えるのは、間違いです。
▼農薬・肥料をなぜ使うのか。
農薬も、化学肥料も使わない栽培は可能です。
但し、どんな条件の土地でも、どんな野菜でも、ということであればかなり難しくなります。
健康に育てれば、虫も病気も寄りつかない。果たしてそうでしょうか?
健康に育った人間は、伝染病にかからない?イモムシが集る食べ物は不健康なモノだけでしょうか?

病気や、害虫に対する防除は、無農薬でも必要となります。
防虫ネットや施設により物理的に防除できる場合もありますが、これができない場合は、薬剤に頼ります。
「無農薬」の場合は農薬でない薬剤。つまり安全性を検査されていない薬剤を使う場合があります。
これは逆に、農薬では禁止されている毒物が混入する危険が高まります。
最近では、ニームオイルへの強毒性分アバメクチンの混入、
木酢液では発がん性物質であるタール、ベンツピレンに関する問題が指摘されています。
危険性への公的な検証が行われていない、病害虫防除に効果があるとうたっている農業資材は、リスクが高いと考えられます。
そして、危険性、効用を検査したものは、自然由来であっても農薬と呼ばれます。
農薬=危険、という固定観念が、逆により危険な作物を育てるおそれがあるのです。
農薬、化学肥料を使わないことを第3者が認証した有機JAS栽培においては、使われる資材にもチェックが入りますから、
危険な毒物が使われるリスクはまず無くなります。
有機JAS認証を受けた野菜に関しては、ここまでで述べた危険性は関係ありません。
が、「無農薬」をうたう生産者は基本的にはノーチェックです。
そしてその生産者が良かれと思い使う防除資材も、危険性はノーチェックなのです。
無農薬=安心というイメージが広がる反面で、危険な栽培をなされた自称無農薬野菜が増えてゆくことに、
生産者として危機感があります。
今後、「無農薬野菜」による健康被害が出た場合、農薬=危険 のイメージを持った一般消費者が、
全ての野菜とその生産者に不信と疑惑を持つのは、容易に想像できます。
誤解が無いよう申し上げますが、全ての無農薬野菜が毒まみれだと言っているわけではありません。
ただ、誰も使用資材の安全性を担保しない、自称無農薬栽培には、
他と比べて大きなリスクが有ることを申し上げているのです。
実際、非農薬で防虫・病気防除をうたう資材の解説内容には、かなり疑わしい文言が並ぶものも多いです。
農「薬」として安全性の検証を行った資材を適正に使う防除の方が、「安心・安全」ではないでしょうか。
農薬と一言でくくられますが、その特性には「毒物」「劇物」から、「普通物」とよばれるものまで、大きな幅があります。
そして、その使用法は厳密に規定されているのです。その全てが危険だとすると、逆に安全性は誰にも証明できません。
農薬=危険 化学肥料=危険 というイメージの弊害が、現実の被害にならないことを祈っています。
その為には、農薬や化学肥料の危険性を妄言であおる方には、なるべく反論するつもりです。
安全性はただのおまじないではありません。事実の裏付けが絶対に必要です。
栽培に必要なのは、その作物にとって「いい塩梅」な環境を作ってあげることです。
言葉のわかりやすさに縛られて、本当に大切なことを見逃してはならないと考えています。
2011-02-05 12:31












